本論では,年代的に接近する北海道支笏カルデラ起源のSpfa-1テフラおよび屈斜路カルデラ起源のKP-1(Kc-Sr)テフラ,仙台沖SO219A-GeoB16442-1コアに挟在する4層のテフラ,猪苗代湖INW2012コアに挟在するINW-A2144テフラと新たに記載した5層のテフラについて,層相記載とそれらに含まれる火山ガラスの主成分元素組成(SEM-EDS)と微量成分元素組成(LA-ICP-MS)を明らかにし,テフラの対比について検討した.その結果,仙台沖コア中の16442-A296テフラと猪苗代湖INW2012コアのINW-A2144テフラは,北海道支笏カルデラを給源とするSpfa-1テフラと対比されることが明らかとなった.Spfa-1テフラのAMS14C較正年代から,猪苗代湖INW2012コアの深度15m以深の年代モデルを修正すると,猪苗代湖が形成された猪苗代湖層上部基底の年代は49.6ka(+1.3ka/-1.4ka)となる.東北地方の湖成堆積物からのSpfa-1テフラの報告は本論が初めてであり,その分布域はこれまでより約300kmも南西方向に拡大されることになる.